捨てられ令嬢ですが、一途な隠れ美形の竜騎士さまに底なしの愛を注がれています。
「じゃあ、午後から出かけましょう。今から必要なものをリストアップしていただけますか?」
「あ、そうですね。わかりました」

 女性の必要なものは、彼には分らない。それは容易に想像が出来たので、私は彼の提案に素直に頷く。

「ついでに俺も必要なものを買いたそうかな。……洗剤とか、もうストックが……」

 彼がキッチンの戸棚を漁っている。……生活能力が高い人だなって、感心。

(私もこれくらいにならなくちゃ)

 ぐっとこぶしを握って、ヴィリバルトさんのようになろうと決意。

 もちろん、今までのんびりと暮らしていた貴族令嬢がいきなり彼のようになれるとは思わない。

 だけど、小さなことからコツコツとやっていれば、いつかは近づける……と、思う。追いつけ追い越せだ。

(婚約破棄されたときはどうなるかと思ったけれど、親切な人に出逢えてよかったわ)

 ヴィリバルトさんの様子とか身分から、親切を装ってひどいことをする風にも見えない。

 本当、彼には感謝してもしきれないと思う。
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