捨てられ令嬢ですが、一途な隠れ美形の竜騎士さまに底なしの愛を注がれています。
 これだけ巨大な身体で拗ねられても、普通はほほえましいなんて思えない。けど、私には可愛く見えた。

 ヴィリバルトさんは、ギードさんに近づく。そして、翼を撫でた。

「ギード、彼女はそういう相手ではありませんよ。困っていたので、住居を提供したまでです」
「……そうなのか?」
「はい。あなたには嘘をつかないと決めていますから」

 優しい手つきでギードさんのうろこを撫で、ヴィリバルトさんは笑っていた。

 目元は見えない。わかるのは、声が優しいから。

「だが……」
「昨夜出逢ったんですよ。そもそも、交際している相手ならきちんとあなたに報告します」

 ……ん?

「それに、あんなにも美しい人が俺みたいな冴えない男を相手してくれるとは思えませんし」

 ……ちょっと待って。

「結婚なんて夢のまた夢です。俺は――」
「ヴィリバルトさん!」

 声をあげる。ヴィリバルトさんとギードさんの視線が、私に集まった。

「えっと……その。ギードさんは、私たちのことを……」
「はい。勘違いしていたみたいです。あなたを俺の伴侶だと思ったようで」

 確かに、そう思っていたなら今までの言葉も納得できる。

 ……そっか。だから拗ねていたのね。

「ギードさん」
「な、なんでしょうか」
「ヴィリバルトさんは、私なんかにはもったいない人ですよ」

 彼の素顔を見たことはないけど。

 性格だけでも、彼が素敵な人だというのはわかってしまう。

 こんな可愛げのない女にはもったいない人だって、知っている。
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