捨てられ令嬢ですが、一途な隠れ美形の竜騎士さまに底なしの愛を注がれています。
 疑問に小首をかしげる私の手首を、ヴィリバルトさんはつかんだ。

 彼の力加減は絶妙だ。優しいはずなのに、なぜか圧も感じる。離さないって伝えてくるみたいで――。

(って、そんなわけないわ)

 私は首を横に振って考えを振り払う。

 ヴィリバルトさんは親切だ。圧なんてかけてくるはずがない。

 彼に連れられ邸宅に戻る。少し歩いて、彼は立ち止まった。手首を離して、私に向き合う。

「すみません。……勝手なことをしてしまって」

 軽く頭を下げた彼の言葉の意味がわからない。

 勝手なことなんてされた覚えがない。

「その。ギードと交流していたのに、引き離してしまって」

 声が本当に申し訳なさそうで、私は手をぶんぶんと横に振る。気にしないでほしい。

「いえ! それに、ギードさんのためですよね。療養中なのに、見知らぬ人がいたら落ち着きませんし……」

 苦笑を浮かべる。それに、私は興奮していた。うるさい他人がいたら、ギードさんだっていやだよね。今更気づいた。

「……そういうわけじゃ、ないんです」

 ヴィリバルトさんがぐっとこぶしを握る。

「あなたがギードと簡単に打ち解けていくのを見て、柄にもなく嫉妬したんです」

 彼の言葉に私の心が揺さぶられた。だって、それって……。
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