捨てられ令嬢ですが、一途な隠れ美形の竜騎士さまに底なしの愛を注がれています。
(ギードさん、案外私のことを好ましく見てくれているってこと?)

 だから、一日一回会いに来てもいいって言ってくれたんだ――!

「こんなこと言われても困りますよね。すみません」

 感動していたけど、慌てて現実に戻ってくる。深々と頭を下げたヴィリバルトさんに向かって手を横に振る。

「ヴィリバルトさんのお気持ちは当然だと思います。ご自分のパートナーがほかの人に気を許すのって、あまりいい気持になりませんよね……」

 ドラゴンは気難しい。気に入らない人間の指示には絶対に従わない。

 竜騎士はドラゴンとの絆に誇りを感じるという。長年のパートナーとぽっと出の私。仲良くしていたらいやに決まっている。

「私の気遣いが足りなくてすみません! 私、本当にドラゴンが好きで……!」

 決して悪意なんてなかったのだと、必死に伝える。

 ヴィリバルトさんは私の話を聞いて、ポリポリと頬を掻いていた。信じてもらえたらいいんだけど……。

「メリーナさんは、本当にドラゴンが好きなんですね」

 彼がぽつりとつぶやく。私は何度も首を縦に振った。

「はい。そこら辺の人じゃ敵わないくらい、ドラゴンへの愛があります」

 笑う。ヴィリバルトさんは私の笑みを見て、どう思ったのだろう。前髪から覗く瞳に宿った感情は見えない。
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