捨てられ令嬢ですが、一途な隠れ美形の竜騎士さまに底なしの愛を注がれています。
「そう言ってくれて、ギードも嬉しいでしょうね。……さぁ、昼食にしましょう。こしらえるので、待っていてください」

 歩き出した彼の背中を、慌てて追いかける。

「私も手伝います。……あまり役には立てないでしょうが」

 食事の後片付けだけであの惨状なのだ。料理ができるとは思えない。

「朝も言いましたが、だれだってはじめは初心者です。それに、俺はあなたのその気持ちが嬉しいですから」

 声のトーンがちょっと高い。本当に嬉しいって思ってくれているんだろう。

「簡単なものから練習しましょう。いつか役に立つでしょうからね」

 彼の言葉にうなずく。

 そう。私はいずれここから出ていく。一人で暮らす術を身に着けなくちゃならない。

 ヴィリバルトさんはそこまで考えてくれている。私も、きちんとしなくちゃ。

(彼に迷惑ばっかりかけていられないもの)

 自分の頬を軽くたたいて、気合を入れる。

 さぁ、がんばろう。
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