捨てられ令嬢ですが、一途な隠れ美形の竜騎士さまに底なしの愛を注がれています。
 昼食を済ませ、出かける準備をする。といっても、大したことはしない。軽く身だしなみを整えるだけ。

 言われたとおりに部屋の前で待っていると、ヴィリバルトさんが迎えに来てくれた。

「お待たせしました。時間がかかってしまって、すみません」

 彼がぺこりと頭を下げる。気にしないでほしいのに。

「私が早く待っていただけですので、お気になさらず」

 笑って返すと、彼はほっとしたように胸をなでおろした。

「そう言ってもらえると助かります。では、行きましょうか」

 うなずいた私を見て、彼は歩き出す。私は彼のあとに続く。

「探し物をしていたんです。こちらをどうぞ」

 言葉の意味を理解するよりも前に、頭にぽすんとなにかが載せられる。触れてみると、どうやら帽子のようだ。

「少々歩くことになるので、日よけがあったほうがいいでしょう。こんなものしかないんですが……」

 申し訳なさそうな彼だけど、逆にこちらが申し訳ない。だって、気を遣わせたみたいだもの。
< 53 / 65 >

この作品をシェア

pagetop