捨てられ令嬢ですが、一途な隠れ美形の竜騎士さまに底なしの愛を注がれています。
遠くに邸宅が見えてくる。ようやく帰ってきたんだ――って実感していると、ヴィリバルトさんが一瞬立ち止まった。
「どうしました?」
首をかしげて問う。彼の視線は一点に注がれている。
私は目を凝らすけど、よく見えない。なにかあるのだろうか?
「ヴィリバルトさん?」
反応がないことが不安で、彼の名前を呼ぶ。彼ははっとして、ごまかすように咳ばらいをした。
「いえ、来客のようです。……知らせは受けていないんですけどね」
もう一度目を凝らす。しかし、私には人影なんて見えない。
「メリーナさん。悪いのですが、少々応対してもいいですか?」
「はい」
私に拒否する権利なんてない。うなずくと、彼は駆け足で敷地のほうに近づいた。
私はゆっくり彼のあとを追う。
(あ、確かに人だ)
少し歩いて、ようやく人らしきシルエットが見えてきた。あの距離で見えるって、ヴィリバルトさんの視力はどうなっているんだろう。素直に疑問だ。