捨てられ令嬢ですが、一途な隠れ美形の竜騎士さまに底なしの愛を注がれています。
「……あ、あの」

 戸惑いがちに声をあげる。男性ははっとしたように軽く頭を下げた。

「失礼。ついじっと見てしまった」

 彼が頭をあげた。どこか精悍な顔立ちなのに、優しく見えるのはたれ目がちな瞳のおかげだろうか。

 男性が手を伸ばして、私の頭に帽子を置く。お礼の意味を込めて、軽く礼をした。

「ヴィリバルト、このレディは?」
「……いろいろ訳がありまして」

 ヴィリバルトさんの目線は泳いでいると思う。はっきり見えないけど、様子から想像するのは容易い。

 対して、ヴィリバルトさんを見つめる男性の目には疑いの感情が宿っている。このままだと、勘違いされてしまいそうだ。

「あの、私は彼に助けていただいたんです。ですから……」

 なんとか勘違いを解こうと口を開く。すると、ヴィリバルトさんがすっと腕を私の前に出した。

 意味がわからなくて彼を見る。口元が動く。たぶん「黙っていて」と言っている。
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