捨てられ令嬢ですが、一途な隠れ美形の竜騎士さまに底なしの愛を注がれています。
「団長。俺は決して不埒な目的で彼女の側にいるわけではありません」

 はっきりした宣言に、私は黙ることを決めた。他人が口を出すべきではない問題だとわかったから。

「ただ彼女が困っていたから、役に立とうと思っただけです」
「……だがな」
「それに、困っている人を助けるのは騎士として当然の勤めです」

 言葉に迷いはなかった。心からの言葉だって、よく伝わってくる。

「――わかった」

 軽くため息をついて、男性が私を見る。視線に戸惑いの色を宿しつつも、彼は今度は深々と頭を下げた。

「こいつは私の部下だ。よろしく頼む」

 よろしく頼むとは一体どういう意味なのか――。

 問うよりも先に、男性は身をひるがえして場を立ち去った。

 ――というか。

(団長!?)

 ヴィリバルトさんの態度と言葉からして、彼は竜騎士団の団長さまなの!?

 咄嗟に口元を押さえる。あの人にもパートナーのドラゴンがいるんだ……!

 会ってみたいという欲望は呑み込んで、私は隣に立つヴィリバルトさんを見上げる。
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