捨てられ令嬢ですが、一途な隠れ美形の竜騎士さまに底なしの愛を注がれています。
「……うーん、どうしようかなぁ」

 手っ取り早いのは酒場のウェイトレスとかなんだけれど……。

 そこもやっぱり、愛想が必要だし。あんまり表情が動いてくれない私には、不向きな仕事と言えよう。あと、純粋に反発心の強い私じゃあ、お客さんと喧嘩になる可能性も高い。うん、無理だ。

「ともなれば……」

 パンをかじりつつ、一人で考えをまとめていく。……が、全くまとまらない。

 挙句唸りだした私を、周囲の人が痛いものを見るような目で見つめている。わかる。だけど、こっちはお金が――というか、生死が関わっているのだ。こんなこと気にしている余裕なんてない。

「……はぁ。どっか働ける場所、ないかなぁ」

 そう小さく零したとき。不意に、「お隣、いいですか?」という声が聞こえてきた。

 慌てて声のほうに視線を向ける。そこには、野暮ったいという言葉が似合いそうなほどに冴えない男が、いた。
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