捨てられ令嬢ですが、一途な隠れ美形の竜騎士さまに底なしの愛を注がれています。
「あの人は、俺の上司です。……休職中の俺の様子を、たまに見に来てて」

 彼の声はどこか沈んでいた。

(私からすると、部下思いの人に見えたけど、実際は違うの?)

 そりゃあ、第一印象と中身が違うなんてよくあることだ。

 実際、私もよく言われるし。

「迷惑――というよりも、重圧なんです。まるで早く復帰しろと言われているみたいで」
「……ヴィリバルトさん」
「考えすぎなのはわかっています。でも、今の俺はどうにもネガティブみたいで」

 わかる。私だって、そういうときがあるもの。

 だれだって常にポジティブに生きたいと思っている。けど、ずっとポジティブなんて無理だ。

 それに、できたとしてもそんなもの疲れてしまう。

「こんなこと言ったら、格好悪いですよね。……あなたには、まだきれいなところだけを見せていたいのに」

 意味ありげな言葉に私は迷った。

 こういうとき、どうしたらいいんだろう。

 ちょっとだけ迷って、彼の顔にぐっと自分の顔を近づける。

「――かっこ悪いなんて、ありえないです」

 私たちの間を風が吹き抜けた。さぁっと揺れる私の髪の毛。風は同時に、彼の前髪をも揺らした。

 覗いた瞳は宝石みたいにきれいだ。どうして、隠すんだろう。

「私はヴィリバルトさんのことを深く知れたみたいで嬉しいです」
「メリーナさん……」
「表面しか見ない関係なんて――寂しいじゃないですか」
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