捨てられ令嬢ですが、一途な隠れ美形の竜騎士さまに底なしの愛を注がれています。
「そうなのですね。……ですが、俺よりもあなたのほうがずっとお綺麗ですよ」

 彼の口元が微かに緩んで、私のことを褒める。……言ってはなんだが、ありきたりな言葉だと思った。

(そもそも、容姿を褒められるのは慣れているし……)

 世間一般的に、私は『美女』の部類に入る。そのため、社交界ではとてもモテた。ただ、この性格のきつさから遠巻きにされてはいたんだけれど。……苛烈とか、そう囁かれていたのも知っている。

 単に反発心が強いだけなのに。

「お褒めいただき、嬉しく思います」

 だから、私はこういうときの当たり障りのない返答を知っている。変に喜ぶ態度を見せると、相手は勘違いしてしまう。つまり、嬉しいという気持ちを示しつつ、一定の距離を保つ。それが、正解。

 けど、このお人は。なんだか、表情を歪めたような気がした。……気がしたというのは、表情がよく見えないから。

 口元の動きから、想像することしか出来ないのだ。

「あなたは、嘘つきだ」

 ……私の眉間がピクリと動いたような気がした。

 心臓が、バクバクと早足になる。そっと、視線を逸らした。

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