イケメン御曹司は、親友の妹を溺愛して離さない
雲ひとつない、真っ青な空の下。
駅へと向かって走っていると、突如強い風が吹き、小さな公園のほうから桜の花びらがこちらまで飛んでくる。
そちらに目をやると、公園の桜の木はちょうど満開で。花の美しさに、自然と頬が緩んだ。
10分後。
「はぁ……何とか間に合ったな」
「うん」
「……なぁ、依茉。本当に一人で大丈夫か?」
駅の改札を通り抜け、ホームで電車を待っていると、隣に立つお兄ちゃんが心配そうな顔で聞いてくる。
「もう、お兄ちゃん。それ聞くの何回目? 心配しなくても、大丈夫だよ。中等部からの友達もいるし」
「でもなぁ〜。依茉は、可愛いから。変な虫がつかないか、兄ちゃん心配で……」
花城学園の高等部は、中等部からの持ち上がりの生徒が半数と、外部受験でやって来る生徒が半数。
そして高等部は生徒の男女比が、6対4と若干男子が多くなる。
そのためか、お兄ちゃんは高校でわたしが男の子に言い寄られたりしないかを心配しているらしい。
「ていうかわたし、全然可愛くないし」
「何を言ってるんだ! 依茉は、昔から天使のように可愛いんだぞ!?」
「ははは」
わたしはお兄ちゃんに、苦笑いすることしかできない。