イケメン御曹司は、親友の妹を溺愛して離さない
お兄ちゃんはわたしに『可愛い』って、口癖のように言ってくれるけど。
そんなに何度も言ってくれるのは、お兄ちゃんだけだからね!?
実際わたしは、今まで男の子から告白されたことなんてほとんどないし。
先日、片想いしていた小林くんにはアッサリ振られてしまったし。
小林くんのことを思い出すと、今も胸がズキッと痛む。
小林くんに告白して振られたことは、お兄ちゃんにはもちろん話していない。
お兄ちゃんのことだから、もしわたしが振られたって分かったら、小林くんを殴りにいきそうで怖いから。
「ねぇ、あの人かっこよくない!?」
「ほんとだ。モデルさんかな?」
わたしたちの近くに立っている女子高生の二人組が、お兄ちゃんを見てキャーキャー言っている。
お兄ちゃんは艶やかな栗色の髪に、イケメンで背も高くて。妹のわたしから見ても、本当にかっこいいと思う。
モテるだろうに、わたしが知る限り今まで彼女は一度もできたことがない。
ーー『父さんと約束したんだ。これからは、俺が母さんと依茉を守るって』
3年前にお父さんが病気で亡くなったとき、お兄ちゃんが泣きながら口にした言葉が頭の中を過ぎる。
もしかして、お兄ちゃんはお父さんとの約束をずっと守ってくれてるのかな……。