イケメン御曹司は、親友の妹を溺愛して離さない


「……依茉?」

「ぎゃあああ……っ」


 恐怖でこの場から逃げ出そうと立ち上がる際に、わたしはまたもや地面に足を滑らせてしまう。


「ちょっと、依茉! 俺だよ、俺!」

「へ?」


 こっ、この声は……。


「一堂くん……?」

「ああ、そうだよ。依茉、大丈夫か!?」


 転倒寸前のところでわたしを後ろから抱きとめてくれたのは、一堂くんだった。


「どっ、どうして一堂くんがここに?」

「東野さんと北島さんは山頂にいるのに。なぜか同じ班の依茉だけが見当たらなかったからさ。二人に聞いたら、依茉が一人で落とし物を探しに行ったって言うから。12時を過ぎても山頂まで来ないし、心配になって……」


 それで一堂くん、わたしのことをわざわざ探しに来てくれたの?


「ああ、依茉が見つかって本当に良かった」


 一堂くんが正面から、ギュッとわたしを抱きしめてくれる。


 一堂くんは温かくて。彼がいつもつけているシトラスの香水の香りも、すごく安心できて。


 わたしも、彼の腰へと腕をまわした。


「依茉、手ケガしてるじゃない。体操服も土で汚れてるし」

「ごっ、ごめん……!」


 一堂くんの体操服まで汚れてはいけないと思ったわたしは、彼から離れようとしたが。


 更に、力強く抱きしめられてしまった。


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