イケメン御曹司は、親友の妹を溺愛して離さない
「痛いけど。でも、少しだけだから。これくらい、だいじょう……ぶ」
──チュッ。
一堂くんが、わたしの手首の内側にキスを落とす。
「ほんと、ごめん。痛いよな……」
チュッと小さなリップ音を立てながら、一堂くんはわたしの手首に何度も口づける。
「いっ、一堂くん。くすぐったいよ」
「ダメ。これは、治療なんだから。我慢して」
治療って……。
一堂くんからのキスにわたしが戸惑っていると、鼻先にポツっと冷たいものがあたった。
え?
ふと空を見上げた瞬間、ポツポツと雨が降ってくる。
それとほぼ同時。わたしたちのすぐそばに、黒塗りの高級車が一台静かに停車した。
「おっ。ちょうど良いところに来たな」
ちょうど良いところに来たって、この車はもしかして……。
運転席のドアが開き、中からタキシード姿の綺麗な白髪の初老の男性が出てきて、一堂くんの前で恭しくお辞儀をする。
「慧さま。お迎えにあがりました」