イケメン御曹司は、親友の妹を溺愛して離さない


 わたしは一堂くんに断ることもできず、今は高級車の後部座席に座っている。


 わたしの真横には、もちろん一堂くん。


 なっ、なんでこんなことになってるの。


「珍しいですね。慧さまが、女性の方と一緒にこの車に乗られるなんて。もしかして、初めてでは? 私は大変嬉しいです」


 寺内さんの予想外の発言に、わたしは思わず隣の一堂くんの顔を見る。


「えっ。初めてって、本当に!?」

「言われてみれば、依茉が初めてかもな」

「てっきり、他の彼女とも車で一緒に帰ったりしてるのかと……」

「いくら俺でも、誰彼構わず家の車に乗せたりはしないよ。女は……依茉だけだ」


 わたしだけという一堂くんの言葉に、どうしてか胸が熱くなる。


 そんなわたしを他所に、すっとわたしの左手が一堂くんの手に掬われ、手首にそっと口づけられる。


「ちょっと、一堂くん!? 手首の治療は、さっき終わったんじゃ!?」

「左手のほうは、まだだったでしょ」

「こっちは、右手に比べたら赤くなってないから。大丈夫だよ」

「いいから、貸して」


 少し強引に、わたしの左手首にキスを落とす一堂くん。


「……ひゃっ」


 最初は軽いキスだけだったのに。途中から、生温かいものがわたしの手首を這う。


 えっ。もしかしてわたし、一堂くんに手首を舐められてる!?


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