メンヘラ・小田切さんは今日も妻に貢いでいる
仕事終わり。
亜夢は、花屋にいた。

場違いな亜夢。
他の客に、怖がられている。

でもそんなこと、全く気にしない。
亜夢の頭の中は、翠李でいっぱいだ。

(翠李ちゃん、何の花が好きなのかな?
リサーチしておくんだった!)

すると、店内に“今日のオリジナルブーケ”と書かれた花束が並んだコーナーを見つけた亜夢。

そこには、値段にそって沢山の花束が飾られていた。

これなら、迷うこともない。

翠李に似合う花束を探し、それを購入して家路についた。

(翠李ちゃん、喜んでくれるかな〜?)
まるで少女のような気持ちで、亜夢は家路を急ぐ。

花屋に時間がかかったため、いつもの電車の時間に間に合わずホームで待っていた。

あいていたベンチに座り、翠李に少し遅くなる連絡を入れる。

「あ!翠李ちゃん?」

『亜夢さん!お疲れ様!』

「フフ…声、可愛い!
あのね、今日いつもの電車に乗り遅れちゃって…
少し遅くなるよ。ごめんね…」

『そっかぁ…わかった!
気を付けて帰ってきてね!』

「はぁ…早く逢いたいよ…」

『フフ…私も!』

「翠李ちゃん。
“亜夢大好き”って言って?」

『亜夢さん、大………』

そこに翠李の声に混じって、亜夢の前にいた男子学生達の声が聞こえてきた。

ホームでふざけていて、ギャハハハ…!!と大きな声で笑っている。

そのせいで、愛しい翠李の声が聞こえない。

「……………
……翠李ちゃん、少し待ってくれる?」
そう言って、保留にする。
そして、学生達のところに近づいた。

「おい」

「え……あ…は、はい…」
「な、なんすか…?」

声をかけてきた亜夢の容姿と雰囲気に、たじろぐ学生達。

「お前等、うるさい。
もう少し、声のトーンを下げろ」

「あ…は、はい…!」
「す、すすすすんません!!」
ビクッと怯え、必死に謝ってきた。

そして大きく深呼吸をして、保留を解除する。

「もしもし?」

『亜夢さん!』

「待たせてごめんね!
はい、翠李ちゃん。
“亜夢大好き”って聞かせて?」

『フフ…亜夢さん、大好きだよ!
帰ってくるの待ってるね!』

「フフ…俺も、大好き!
急いで帰るからね!」

表情、雰囲気、声……全てが、柔らかく甘くなった。
学生達はその姿を、あ然として見つめるのだった。
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