メンヘラ・小田切さんは今日も妻に貢いでいる
「あ、これ?
若かりし頃の名残〜」

(てことは………)


「―――――翠衣ちゃん!!」
そこに聞き慣れた、愛しい声が聞こえてきた。

「え?あ!亜夢さん!」
パッと翠衣の表情(かお)が華やいだ。

「なんでこんなとこに……ん?」
亜夢の視線が、翠衣の手に行く。

男に掴まれてるのを見て、一瞬で怒りに覆われた。

「汚い手で俺の翠衣ちゃんに触るんじゃねぇよ…」
その男の手を掴み上げ捻った。

「イテテテ…!!!!
お前…もしかして……
つか!離、せよ!!!」

「は?この手、折ろうとしてるんだが?」

「はぁ!!?」

「亜夢さん!!!!」
そこに、翠衣の鋭い声が響いた。

「え……翠、衣ちゃ…」

「亜夢さん、ダメ!!
離してあげて!!」

「あ…あ…ご、ごめんね!」
途端にオロオロしだし、パッと手を離した。

「私は大丈夫だから!ね?」
「でも…でも…手…掴まれてた…」

「大丈夫!ほら!」

「ほんと!?
痛くない!?
折れてない!?
ちゃんと動く!?」

「うん!ほら!」
グーパー、グーパーとして見せる。

「ほんとだ…
よ、良かっ…たぁ……」

「亜夢?」
そこに、翠衣にナンパしていた男達の中の一人が、声をかけてきた。

「は?
あ…スギオだ」

そして更に後ろから……

「「亜夢!!」」
敏郎と冬菜が、怒鳴りながら現れた。

「お前!!
車道、突っ切るんじゃねぇよ!!」
「危ないでしょ!!?バカ!」

「は?翠衣ちゃんがいたんだ。
一刻も早く、会いに行く必要があるだろ!」

「はぁ…あのなぁ…
それで死んだらどうすんの?」
心底呆れたようにため息をつく、敏郎。

「でも翠衣ちゃんがいたし」

「亜夢さん!」

「あ…翠衣ちゃん…」

「命を粗末にしないで!」

「あ…」

「パパやママみたいに、亜夢さんまで亡くしたら私……」

「あ…そ、そうだよね……
ごめんね!ごめんなさい!!」

今にも泣きそうな翠衣に、亜夢は何度も謝罪を繰り返すのだった。
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