メンヘラ・小田切さんは今日も妻に貢いでいる
小田切さんは翠李には敵わない
亜夢と敏郎―――――

高校生の時は、最強・最悪の二人だった。

この時亜夢は既に、女を金で買っていた。
二人の出逢いは、ある女子高生を通じて知り合った。


ガン!!と勢いよく、一年の教室のドアが開く。

黒沢(くろさわ) 亜夢って奴、どこだ?」
恐ろしい雰囲気を醸し出した、当時高校一年の敏郎。
(まだ母親の離婚前なので、亜夢の苗字は黒沢)

この時既に敏郎は、沢山の生徒を牛耳っていた。

「む、向こう…で、す…」
近くにいた生徒が、窓際の席を指差す。

亜夢は、窓の外をボーッと見つめていた。

敏郎が亜夢の元に向こう。
ゴン!!と、机を殴った。

「おい、黒沢。
面、貸せや」

「どうして?」

「お前、俺の女とネたんだろ?
人の女に手ぇ出すんじゃねぇよ!!」

「は?
俺は、買っただけ。
嫌なら、売らなきゃいい」

「は?
お前、何言ってんの?」

「お前の女が“売ってきたんだ”
だから、買った。
何が悪い?」

「売った?」

「あぁ」

「何を?」

「愛」

「…………は?意味、わかんねぇ…」

「愛は金で買うもんだろ?」

「違うだろ…普通」

「でも、愛をくれたよ。あいつ。
俺を愛してくれた。
一人は嫌だ。寂しい…」

「お前は…本気で人を好きになったことないのか?」

「は?
だから金を払ったんだが」

「違う。
愛情は、無償だろ?」

「は?
違うだろ?」

「………」

「………」

敏郎は、何も言えなくなる。
同時に、切なくなっていた。 

敏郎は人好きで人情深く、何より仲間や恋人を大事にする人間だ。
だから敏郎には、仲間が多い。

「―――――黒沢」
「何?」

「お前。俺の仲間になんねぇか?」

「は?」

「金はいらない。
何もくんなくていい。
その代わり、俺達仲間を“裏切るな”
俺達と普通に過ごすんだ。
そうすれば、無償の感情がわかると思う」

「うーん…
まぁ、いいよ。
どうせ、暇だし。
一人にならなくて済む」



これが、亜夢と敏郎の出逢いだ。
< 34 / 49 >

この作品をシェア

pagetop