メンヘラ・小田切さんは今日も妻に貢いでいる
それから――――亜夢の宣言通り、夕食前に狂おしく抱かれた翠李。

そのおかげ?で、懐石料理を満足するまで堪能した。

夕食後も当然のように亜夢に抱かれて、寝静まった夜更けに二人は眠りについた。


翌日。

亜夢をどうにか説得し、旅館内にある男女別の温泉に入った二人。

「じゃあ…ね…翠李ちゃん…」
切ない別れをする、亜夢。

「亜夢さん、せっかくだしゆっくり浸かろうね!」

「うん…
でも、もしかしたら俺、温泉で溺れてるかも?」

「はい?」

「その時は、男湯に入って助けてね」

「亜夢さんのためなら、何処へだって行って助けるよ?
でも、溺れないように気をつけて?」

「うん、気をつける」

「ちゃんと、生きて出てきてね?
亜夢さんに会えなくなるのやだからね!私」

「あ…そうだよね!
翠李ちゃんに会えなくなるもんね!
うん!ちゃんと生きて出てくるよ!」

………と、コントのような会話をして(でも、二人は至って真剣)二人は、男女別れた。

そしてすぐに出てきた、翠李。
その足で、お土産を買いに向かった。

敏郎に土産を買いたかったからだ。

バレンタイン同様、絶対に亜夢にバレないように買う必要があったから。

言うまでもなく……敏郎に土産を渡すことを知れば、亜夢のメンヘラは最上級に面倒くさくなる。

ここの旅館に来た時に亜夢と色々見て回っていたので、何を贈るかは決めていた。

翠李は黒のシガレットケースを購入し、旅館から宅急便で送ってもらうことにした。

「―――――お願いします!」

そして冬菜に事情を説明するメッセージを送り、温泉に戻ったのだった。


今度は二人でお土産を選ぶ。
モトコと、翠李の祖父母、亜夢の会社と、翠李の職場………

「翠李ちゃん、若崎には何買うの?」

「ん?
シガレットケース!」
敏郎とお揃いの、紫のシガレットケースを取った。

「へぇ~!
あ!トシには、買わないよね?」

「え!?
う、うん…」
(ほ、ほんと…鋭い…)

「ダメだからね!
トシに土産なんか渡したら、惚れるかもでしょ?
翠李ちゃんは、とにかく可愛いんだから!」

「そんなことないと思うけどな!」

「そんなことあるの!」


翠李は心の中で“やっぱ、さっき買っといて良かったぁ…”と肩を撫で下ろしていた。


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