メンヘラ・小田切さんは今日も妻に貢いでいる
寝室にベッドのスプリング音と、翠李の甘い声が響いている。

一度では終わらない、亜夢とのセックス。


「…………亜…夢…さ…もう、だめ…」
「俺もダメ…収まらないんだ……」
身を捩る翠李を、追いかけるように押さえて手を握った。

「亜……さ…」
「はぁ……可愛い…可愛い……俺の、俺だけの翠李ちゃん…!」

「お願……」
「フフ…“休憩”させてあげる!
水、持ってくるね!」

キッチンからミネラルウォーターを持ってきた、亜夢。
翠李を優しく起こす。

そしてそのミネラルウォーターを口に含む。
翠李に微笑み、口唇を重ねた。

「んん…」
翠李の口の端から、ミネラルウォーターが溢れる。
「フフ…ほんっと、エロい表情(かお)するよね…!
可愛くて、興奮する…!」

「亜夢さん…」
「なぁに?」

「もっと…」
「ん?」

「水、欲し…」
「……/////」
(エロすぎだろ…!//////)

翠李の色っぽい表情に、更に煽られる亜夢だった。


次の日の朝。
朝からバタバタしていた。

「もう!亜夢さんが寝かせてくれなかったから、寝坊したでしょ!!」
「えー、翠李ちゃんがエロくて可愛いのが悪いんだよ!」

「あーとにかく、もう出なきゃ!!」

二人は足早に、マンションを出た。

駅まで歩きながら、翠李は祖父母宅に電話をかけた。
「ごめんね、おばあちゃん!
――――――うん、うん、ありがとう!」

「おばあちゃん何だって?」
「焦らないで、気を付けておいで?って!」
「良かった!」

駅に着いて電車に乗り、ゆっくり一時間程揺られる。

「おじいちゃんとおばあちゃんへのお土産、蜜柑で良かったの?」
紙袋にパンパンに入った蜜柑を見ながら、翠李に言う亜夢。

「うん!
果物、好きだから!
お菓子とかはあんま食べないの」

「お金は?」

「…………は?」

「お年玉っていうのは変だけど、生活の足しにしてくださいみたいな!」

「ダメだよ!!それ!」

「え?え?
な、なんで怒るの?
え?え?俺、そんな変なこと言った?」

亜夢の中で“金品”は絶対なのか、必ず“金品”を渡し相手との交流を図ろうとする。

特に、翠李と翠李の祖父母には。

「おじいちゃんとおばあちゃんにお金なんか渡したら“バカにしてるのか!?”って怒るよ!
だから私からのお金も受け取ってくれないんだから。
果物で十分なんだよ?
それにね。
私や亜夢さんが定期的に顔を出すだけで、おじいちゃんとおばあちゃんは幸せなんだよ?」

「そうなの?」

「小田切さん……あ、お義母さんも、実は亜夢さんが顔を出すととっても嬉しそうなんだよ?」

「ふーん…」
不服そうな、亜夢。

「亜夢さん。私も、亜夢さんと一緒にいられるだけで、幸せだよ!!」

翠李が微笑むと、亜夢も「フフ…俺も!」と微笑んだ。
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