α様は毒甘な恋がしたい


 毒舌拡声器に心当たりがなくて、首をかしげる私。

 でも思い出の脳内スクリーンに、鮮明に映し出せてしまうんだ。


 私のことを『ハルヒ』と呼び

 言葉を交わすことができる

 吠えてばかりのツチノコのことを。


 山の中でおしゃべりをした、楽しい記憶もある。

 ツチノコが目の前で殺された時のことは、あまり思い返したくない。

 毎晩悪夢を見そうなくらい、残虐だから。

 未だこの記憶を、私は自分の前世だとは信じられない。



 私は無性に、左手の薬指を噛みたくなった。

 辛い時、心がザワつくとき、私はこの指を噛んでごまかす癖がある。


 前世の記憶の中のハルヒも、泣きながらよく左手の薬指を噛んでいたけれど。

 これって、偶然なのかな?

 それとも……

 本当に私は、ハルヒ本人なのかな?



「なんで美心ちゃんは、私に怒らないの?!」


 真横から突然飛んできた罵声に、ビクリ。

 ハッとなり顔を上げる。
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