腹黒弁護士に囚われて、迫られて。ー輝かしいシンボルタワーで寵愛されていますー
和歌のお母さんは俺のことを分かっていないようで、「え?」と目をキョトンとさせている。だが、今はゆっくり挨拶している場合ではない。
「ベリが丘の街にある東郷弁護士法律事務所の東郷暖と言います。有栖川和歌さんの担当弁護士です。中、入らせていただきます」
玄関で靴を脱ぎ、真正面にあるリビングへと向かうと、和歌に馬乗りになって、掴みかかっている尚人を目にした。
尚人は俺を見るなりギロリと睨む。殴られたのだろう、和歌の口から血がにじみ出ていた。
俺が弁護士という立場でなければ、こいつのことを殴り返している。
「初めまして。安曇尚人さん。東郷弁護士法律事務所の者です。この度、有栖川和歌さんの弁護人として同行させていただきました」
鞄の中から尚人に送るはずだった内容証明書を取り出し、それをそっと尚人に差し出した。
すぐにキッチンに向かい、使われていないビニール袋を一枚取り、冷凍庫を開ける。袋に氷を詰めて和歌の所に戻り、氷袋を和歌の頬に当てた。