つれない男女のウラの顔
あっという間にグラスを空にしたマイコを見つめながら、同じ悩みを持ちながらも結婚した妹さんを、少し羨ましく思ってしまった。
私もいつか結婚出来るのだろうか…。
「ていうか、ここの料理どう?おいしいでしょ?」
「あ、うん最高。お酒にも合うね」
味の濃いお肉料理を口に運んでは、ビールジョッキを豪快に煽る。普段は家で引きこもっているせいか、外食が楽しくて仕方がない。
「私の顔、赤くなってる?」
「うん、ほんのりね」
「やっぱり?ちょっと火照ってきた。酔ってはないんだけどな」
「赤い京香も可愛いよ」
「口説いても何も出ないよ」
マイコに赤面したところを見られるのはもう慣れた。驚くほど抵抗がない。
そのお陰で赤面レベルも“ほんのり”で済んでいるのだと思う。
他の人ともこれくらい気楽に接することが出来たら、また何か違ってくるのだろうけど…。
「やっぱ無理。人間こわい。視線こわい。根暗最高」
「え?なんて?」
やっぱり無理だ。私には無理。このまま一生ひっそりと過ごしたい。
このままじゃ、結婚どころか彼氏が出来る可能性も低いわ。
「てかさー、その赤面症のこと、幼馴染は知ってるんだっけ?」
「あ、うん。一応知ってる。近所に住んでるから家族ぐるみで仲良くて、隠そうにも隠せなくてさ。まあ全部筒抜けだよね」
「その幼馴染、男なんでしょ?確か同級生で…えっと、名前なんだっけ」
「匠海くん」
「そう、匠海くん!その人とは何もないの?」
「何も…とは?」
「何って、そんなのloveしかないじゃん?」
「ラ…?」
それってもしや恋バナ的な流れですか?私には無縁の、恋の話…。