つれない男女のウラの顔
「それはない。そんな関係じゃないの。幼い頃はよく遊んでたけど、最近は数か月に一度連絡を取るくらいで…」
「でも数か月に一度はちゃっかり連絡取ってんのね」
「連絡って言っても、生存確認みたいな感じだし」
「案外向こうは京香狙いだったり」
「ないない。匠海くんって、ほんとマイコみたいな感じの人なの。気さくで面倒見が良くて、純粋に根暗で引きこもりな私を心配してくれてるんだと思う。幼馴染って言うより、お兄ちゃんみたいな。わたし一人っ子だし」
匠海くんが私に恋愛感情を抱いていることは絶対にないと思う。何度か「彼女が出来た!」って報告されたこともあるし。
小学校に入学する前は「結婚しよう」とよく言い合っていたらしいけど、それも親から聞いた話で記憶に残っていない。子供あるあるの、軽い口約束だ。
「匠海くんは地元に残ってるし、今でも親同士が仲良しだから共通の話題が多いの。私の母親は私と違って誰にでも話しかけちゃうから、匠海くんはよく捕まってて、その報告とか…」
「ふうん…。でもその匠海くんって人が、唯一の男友達って感じでしょ?」
「まあそうなるのかな」
「ますます興味が湧くわ。それこそ京香のご両親もその匠海くんとくっつく事を望んでるんじゃないの?」
「そんなことはないと思う。ただ、私の両親は既に60歳を超えてるから“早く結婚して私達を安心させて”ってよく言われるけど」
「なるほどねー。となると、有力候補はやっぱりその匠海くんになるわよねー」
「すぐそこに結びつけようとしないでよ」
身を乗り出して相槌をうつマイコに「はい、この話はもう終わり」と強制的にシャットダウンする。するとマイコは不服そうに「京香の浮いた話、一度は聞いてみたいわ」と唇を尖らせた。