つれない男女のウラの顔



「どこか行きたいところはあるか?」


予定通り30分ほどで準備を済ませ、成瀬さんの車に乗った私達は、まず最寄りのコンビニに寄った。
朝食やコーヒー、そして小腹が空いた時のためのお菓子を買い込んで、いまは車内で今日のデートプランを考えている。


「えっと…恥ずかしながら、デートスポットというものが分からなくて…」

「それは俺もだ…」

「きっとそうだろうと思って、実は準備をしながらネットで色々調べました」

「……なんか複雑だな。助かるけど」


元彼とすらデート経験がない私と、恋愛を避けてきた成瀬さん。デート初心者の私達が、この時点で躓くことはなんとなく予想出来ていた。

そのため、車で行けそうなデートスポットを簡単に調べてみたのはいいけれど、選びきれないほどたくさん出てきてびっくりした。
景色がいい場所、楽しそうな施設、美味しそうなランチやスイーツが食べられるお店。1日じゃ足りないくら行きたいところがいっぱい見付かって、正直かなり焦った。

まぁ本音を言うと、成瀬さんと一緒にいられるなら、場所なんてどこでもいいのだけど。


「ここなんてどうですか?」

「ん?」


運転席にいる成瀬さんにスマホの画面が見えやすいよう体を近付けると、成瀬さんも覗き込むようにして距離を詰めてきた。すると不意にお互いの肩がトンっとぶつかり、思わず息を呑んだ。


「す、すみませ…」


すぐに謝罪しながら成瀬さんの方を向けば、至近距離に彼の顔があって、ボンッと爆発するように一気に体温が上がった。

それは成瀬さんも同じだったようで「俺もごめん」と小さく紡いだ彼の顔も、私と同じように赤くなっていた。

肩が触れただけで赤面してしまう私達が、デートなんて出来るのだろうか。と不安になったのも束の間。

再び距離を取ろうとした私を制すように、成瀬さんの手が、スマホを持っている私の手を優しく掴んだ。


「よく見せて」

「は、い……」


再び肩が触れ合う。成瀬さんの匂いが鼻先を掠める。

もしかしてもうデートモード?恋人のような距離感に、心臓が激しく波打つ。
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