つれない男女のウラの顔

「ほら行くぞ」

「は、はいっ…」


さり気なく手を繋がれ、ドキッと心臓が跳ねた。車の中限定だと思っていたからびっくりだ。どうやらデート中はずっと手を繋いでいてくれるらしい。

成瀬さんの熱で、また私の体温が上がっていく。だけど、あれほどコンプレックスだったこの体質が、今は少しだけ好きだと思える。

だって成瀬さんとの唯一の共通点だから。
きっとこの“秘密”がなければ、ここまで成瀬さんと関わることはなかったと思う。こんな大恋愛を経験することも、きっとなかった。

そして、こんなに幸せな時間を過ごせることもなく、ひとり寂しく歳をとっていたはずだ。

だからこのコンプレックスが、今は少しだけ好き。というより、こんな私を受け入れてくれて、気持ちを理解してくれる成瀬さんが好き。


幸せだな。成瀬さんに出会えて良かったな。

今日一日で、私は何度そう思うだろう。


「海鮮丼のあとは、足湯でも行ってみるか?」

「はい」

「そのあとは、海の見えるカフェに行こうか」

「はい、行きたいです」


彼のいる右側が熱い。繋がれている手を見る度に顔が綻ぶ。

チラッと、彼の方を盗み見る。
優しく目を細める横顔を見つめながら「幸せだな」と、心の中で呟いた。




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