つれない男女のウラの顔



新鮮な海鮮丼は頬っぺたが落ちそうなほど美味しかった。思わず「おいしい~」と興奮してしまったほどだ。


「…可愛いな」

「え…?」


その時成瀬さんがボソッと呟いた言葉が「可愛い」に聞こえて、耳を疑った。

今のはなに?聞き間違い?それとも本当に……


「京香は意外と表情が変わるよな。見ていて面白い」


うん、めちゃくちゃ聞き間違いでしたね。“可愛い”じゃなくて“面白い”だった。なんて恥ずかしい解釈をしてしまったのだろう。
文字数的には何となく合わない気がするけど、冷静に考えれば成瀬さんが私にそんなこと言うはずないもんね。うん、ないない。


「会社ではぼっちで、常に真顔ですからね。それを言えば、旭さんも会社のイメージとは全然違います」

「どんな風に?」

「どんな………?」


塩対応どころか親切で優しくて、クールどころかちょっと意地悪で、感情が死んでいるどころかめちゃくちゃ心があたたかい人で、無愛想どころか笑顔が素敵でかっこいいですって…言えるわけないじゃん?


「………秘密です」

「なんだそれ」


ほら、また笑った。成瀬さんが笑う度に心が惹かれていること、成瀬さんは知らないでしょ。


ずるいな、ほんと。




「よし、行こうか」


海鮮丼を食べ終えた私達が次に向かったのは足湯だ。

夏に足湯なんてもしかすると地獄かもしれないと不安になったけれど、屋根もあり綺麗に整備されている施設だけあって、利用客はぽつぽつといた。


「癒されますねえ」


綺麗な景色を眺めながら浸かる足湯は最高だった。体はだいぶ火照るけど、最近バタバタしていたからか余計に癒される。


「老後はこういう静かなところを巡ってのんびりしたいです」

「気が早いな」


隣に成瀬さんがいてくれたら、もっと最高なんですけどね。

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