つれない男女のウラの顔


「それにしても、旭さんにしては珍しかったんじゃないですか?カメラマンさんの前で赤面しちゃったりして…」


話をはぐらかすように尋ねると、成瀬さんは「ほんとにな」と苦笑した。


「職場では絶対に表情を崩さないイメージがあるので、少し驚きました」

「自分でもその自覚はある。だから“感情が死んでる”ってよく言われるのだろうな。まぁ“無”になるのは得意だから、あながち間違いではないが」

「それは間違いですよ。旭さんがとてもあたたかい人だってこと、私は知っていますから。旭さんは感情が死んでいるわけではなく、いつどんな時でも冷静なだけだと思います」

「…そんないいものじゃないよ」

「いえ、密かにずっと見ていたので分かります」

「…え?」


やばい、思わず口を滑らせてしまった。

コーヒーの入ったカップを口に近付けようとしていた成瀬さんの手が止まった。恐る恐る隣に視線を向けると、彼は目を丸くして私の方を見ていた。


「…えっと、その…こうしてお話するようになる前から、実は旭さんに憧れを抱いていました…」

「…憧れ?」

「はい。私はすぐに動揺して顔が赤くなってしまうので、常にマスクで顔を隠して、なるべく人と関わらないようにひっそり生きてきました。なので、常に冷静な旭さんを見て、ずっとカッコいいなって思ってました」

「……」

「旭さんはプレゼンやコンペもお上手だって聞きました。私に無いものをたくさん持っている旭さんは、私にとって憧れの人なんです。旭さんのように、冷静で不意打ちにも動じない、鋼の心臓が欲しいなって…」

「買い被り過ぎだろ。もう気付いていると思うが、俺も不意打ちには弱いよ」


てか鋼の心臓ってなんだよ。と困ったように笑う成瀬さんを見て、思わず笑みが零れた。
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