つれない男女のウラの顔




さすが人気のデートスポットだけあってカップルばかりだ。手を繋いで歩いている人も多いからか、私も躊躇なく成瀬さんと手を繋げてしまう。


「綺麗…」


目の前に広がる夜景を見て、自然と声が出た。

インドアな私でも夜景は何度か見たことがあるけれど、今日のこの景色が今までで一番綺麗に見える。

もちろん男性と二人で見るのは初めてだ。初デートの…成瀬さんとのデートのラストにピッタリだと思う。


「…旭さんはこういう場所に、女性と来たことがありますか?」

「ないよ。京香が初めてだ」


何となく予想は出来ていたけど、やっぱり嬉しい。成瀬さんの初めてを奪えた優越感。小さなことだっていい。自分の記憶に刻むのと同時に、成瀬さんの記憶にも少しでも残ってほしいから。


「周りは見事にカップルばかりですね」

「反対に言えば、周りからは俺達も同じように映っているだろうな」


少し座って休むか?近くのベンチを指さしながら尋ねられ、頷いた。ベンチに腰を下ろし、手を繋ぎ直して夜景を見つめる。

すると突然、私達の目の前を通り過ぎようとしていたカップルが足を止め、お互いに腰を抱き寄せたかと思うと、堂々と唇を重ねた。

あまりにも自然なキスに思わず目を見張った。さすがデートスポットだ。よく見れば夜景を見ながらバックハグしているカップルもいるし、とにかくイチャイチャしているカップルがたくさんいる。

再び歩きだしたキスカップルの背中を見つめながら、顔が熱くなるのを感じた。

私の顔を見た成瀬さんが「赤くなってるぞ。暗くてもよく分かる」と悪戯っぽく笑う。


「カップルって…こういう場所でもキスするものなんですね…」


空いている方の手で赤くなった顔を隠しながら呟けば、成瀬さんは「京香」と私の顔を覗き込みながら名前を呼んだ。


「───俺達もしてみるか?」
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