つれない男女のウラの顔
「……え、え?えっと…え?」
理解が追いつかない。完全に語彙を失った私の口からは「え」しか出てこなかった。
顔は更に熱くなり、全身に変な汗が滲む。
成瀬さん、それは本気ですか。さすがに贅沢すぎませんか。
ていうか“俺達も”ってどれのこと。バックハグ?それとも………。
「き…キスのこと…ですか?」
「うん。練習、必要かと思って」
肯定された瞬間、倒れるかと思った。
一体何が起きているの。もしかして夢を見ている?
練習に付き合えと言ったのは私だけど、さすがにここまで求めていなかった。望んでいいとも思っていなかったから。
スパルタいくとは言っていたけど、本当にスパルタ過ぎませんか。
「な、なな成瀬さんは…」
「呼び方」
「あ…旭さんは、その、嫌…ではないのですか?」
「嫌なら言わない」
確かにそうだ。そうなんだけど…。
もしかして成瀬さんは役に入り込むタイプ?だって今日は付き合いたてのカップル、若しくはお嫁さん設定だから。
「私…はじめてで…やり方が…」
顔を隠していた手を退けると、熱を孕んだ瞳と視線が絡んで息を呑んだ。
成瀬さんが今までで一番男に見える。
どうしよう。頭が真っ白で、脈は乱れて、呼吸の仕方が分からない。