つれない男女のウラの顔
「その人ってもしかして、こないだ京香を実家に送った“友人”?」
「え…?」
思いがけない質問に思わず息を呑んだ。
匠海くんの言う通り、私を実家まで連れて行ってくれたのは成瀬さんだ。だけど、なぜそれを匠海くんが知っているのだろう。
「なんでそれを…」
「あ、いや、さっきおばさんが喜んでたって話しただろ。京香が会いに来てくれたって。夜遅くに“友人”に送ってもらったらしいって話を聞いてたから、何となく男かなって」
「うん…お母さんがお父さんのことで電話をしてきた時に、たまたま彼がそばにいて…それで、今すぐ会いに行ってあげた方がいいんじゃないかって言ってくれたの。もうバスも走ってない時間だったから、わざわざ送ってくれて」
「やっぱりそうだったか…うん、なんか安心した」
「安心?」
「京香の好きな人が、いい人そうで安心した」
そりゃ好きになるよな。と苦笑した匠海くんは、手を付けずにいたオムライスにスプーンを入れた。ひと口食べて「美味い」と零した彼は、続けて「美味いけど、これから先オムライスを見る度に失恋したこと思い出しそう」と呟いた。
「あ、多分おばさんは気付いてないから安心して。その友人が男ってことに」
「匠海くんは言わなかったの…?」
「ばか、自分に不利になること言うわけねえだろ。でも、知ったら喜ぶと思うぞ。京香は男を見る目があるわねーって、安心するんじゃね?」
「お母さんってそんな喋り方だっけ」
全然似ていない母のモノマネに、思わず笑ってしまった。
泣きながら笑う私を見て、匠海くんが「泣くか笑うかどっちかにしろよ」とツッコミを入れる。
「その人が羨ましいな。京香が落ち込んでても、俺はそばにいてやれない。すぐ助けられる距離にいる、その人が羨ましい」