つれない男女のウラの顔
匠海くんの優しさに胸がいっぱいになって、その後もなかなか涙は止まってくれなかった。
グズグズ泣きながらなんとかナポリタンを完食した私を見て、匠海くんはやっぱり笑っていた。
さっき匠海くんは、私の笑顔に何度も癒されたと言っていたけど、それは私も同じだ。匠海くんがいつも隣で笑っててくれるから、本当に心強かったよ。
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店を出ると、空には今にも雨が降り出しそうな真っ暗な雲が広がっていた。
「急ごうか」と言った匠海くんに頷いて、ふたりで早足で駅へ向かった。
「ここでいいぞ。荷物もあるし、本当は送ってやりたいけど、その隣人に誤解されたら困るしな」
駅前で私と向き合うように立った匠海くんは、代わりに持ってくれていた母からの手土産を私に差し出した。
それを受け取った私は、彼の目を見ながら「ありがとう」と返した。
「会えてよかった。元気でな」
「匠海くんもね」
「あと、頑張れよ。報告待ってるから」
「うん、分かった…頑張るね」
踵を返した彼に、もう一度「ありがとう」と感謝の気持ちを伝えた。顔だけこちらに向けた匠海くんは「京香の嫌いなアレが来そうだから、早く帰れよ」と言うと、手を振りながら優しく目を細めた。
駅の中に消えていく匠海くんの背中を見つめながら目頭が熱くなるのを感じた。一生の別れではないのに、なぜだかものすごく寂しく感じた。
こんな私を想ってくれてありがとう。匠海くんが背中を押してくれたから、今なら何だって出来る気がする。頑張るから、すぐに報告するから。だから、応援していてね。
匠海くんの背中が見えなくなったのを確認した私は急いで踵を返した。
一ノ瀬さんとここで顔を合わせてから、もう2時間近く経っている。彼女は彼に気持ちを伝えただろうか。ふたりは今どこにいるのだろうか。
何も分からないけど、行動せずにはいられなかった。
もう絶対に後悔しないように。手遅れになる前に。