つれない男女のウラの顔
「あの男は何者なんだ」
「あの男…って、浮気くんのことですか?」
「名前からして好かないな。その男とはどんな関係?」
「彼は同期ですよ。生産技術の浮気くん、ご存知ないですか?」
そんなことより距離が近過ぎてドキドキする。しかもここが職場であるせいか、余計に緊張感が増す。
至近距離で私を見下ろす彼の迫力に息を呑む。こんな時でも色気を感じてしまうから困る。
成瀬さん、私こう見えて欲求不満状態なんです。出来れば今すぐ私から逃げてほしい。
「目の前でイチャつかれるのは、決していい気分ではないな」
「な、なんのことですか…?」
成瀬さんが私の右手を取る。
その手をまじまじと見つめたかと思うと、手の甲にそっと口付けた。
「旭さん…?!」
「そうやってすぐ赤面して。他の男の前でそんな顔したらダメだろ」
「えっ…」
「好きだって勘違いされたらどうするんだ」
イチャつく…右手…赤面…もしかして、さっきのグーパンチのこと?
「あの、さっきのはグーパンチってやつで、陽キャが“いえーい”な気分の時にとる行動みたいで」
「その陽キャ男と飲みに行くつもりか?“花梨さんと飲むの楽しみー”って言ってたよな」
「あ、あれはビアガーデンの話で」
「石田といい、どうしてすぐ狙われるんだ。今まで無事だったことが不思議で仕方がないんだが」
「狙う…?違いますよ、誤解です。ビアガーデンはふたりで行くわけではなくて、毎年恒例の同期会で…」
「……同期会?」