つれない男女のウラの顔
「でも、なるべくあの男には近付かないでほしい」
「浮気くんは普通の人ですよ。…いや、少し変わってますけど…」
「他の男もだめ。誑かされそうで心配だ。なるべく八田と一緒にいて」
「心配しなくても恐らくそうなるとは思いますが、誑かされることはないかと…同期は普通の人ばかりだったと思いますし」
「石田のことも見抜けなかったんだ。京香の普通はあまり信じられない。特にさっきの男には気を付けて」
「そんな…」
確かに見抜く力は欠如しているかもしれないけど、さすがに過保護過ぎではないか。
成瀬さんって意外と心配性なのかも。
「でも私は一応彼氏持ち設定になっているので旭さんが心配するようなことは何もないかと…」
「そんなの分からないだろ。特にさっきの男は名前からして怪しい」
成瀬さんはそう言うと、小さな溜息を吐きながら私を抱き締めた。成瀬さんの匂いがふわっと鼻腔をくすぐって、ドキッと心臓が跳ねる。
「もしかして、嫉妬してます?」
「………そうだよ。悪いか?」
少し間があったあと、成瀬さんは私の耳元に顔を近付けた。
「…今日も俺の部屋に来れる?」
そのままキスされるのかと思いきや、甘い声で囁かれた。彼の息が耳にかかり、ぞくりと身体が震えた。
こくこくと必死に首を縦に振ると、ゆっくりと体を離した成瀬さんは満足気に口角を上げ「待ってるからな。じゃあ俺は会議に行ってくる」と続け、先に部屋を出ていった。
……社内恋愛、やっばいな。