つれない男女のウラの顔
「今の言葉は本気と捉えていいか?」
「もちろんです…大好きな旭さんに触れられたいと思うのは当たり前じゃないですか。私はこれからも、旭さんと一緒に新しい世界を見たい…だから、少しだけ恐怖心はあるけど、旭さんと…ひとつになりたいんです…」
熱く語りすぎたせいだろうか、言い終えたあと一筋の涙が頬を伝っていることに気付いた。
「俺はいつも京香に言わせてばかりだな。さっそく格好悪い姿を見せてる」
成瀬さんは困ったように笑いながら、私の涙を指でそっと拭った。
横髪を撫で、涙の跡に口付ける。愛しそうな目で私を見つめると「引かれてもおかしくないのに…京香が彼女でよかった。ありがとう」と囁いた。
“ごめん”じゃなくて“ありがとう”なのが嬉しかった。彼女として認められているのが伝わってきて、思わず顔が綻んだ。
「先にドジで卑屈な私を受け入れてくれたのは旭さんだから…今度は私が受け止める番なんですよ」
私の手に指を絡ませ、その手をソファに縫い付けた彼は「そうかもしれないな」と紡ぎながら覆い被さるようにキスを落とす。
「今日は本当に止めないぞ。ちゃんとアレも用意したから」
「あれ…?」
「うん、大事なアレ」
唐突に放たれた言葉に思わずキョトンとした。一瞬なんのことだか分からなかった。
けれど程なくして浮かんだのは、薬局やコンビニなどに売っているアレで…。
「えっ…あ、アレ…そっか、アレが必要なんですね…私ったらすっかり…」
もしかして、私を“大事にしたい”っていうのは、そっちの意味も込められていたのだろうか。
なのに私は………昨日の勘違いが余計に恥ずかしい。しかもマイコにあんな質問までしてしまった。ああ、記憶を消したい。