つれない男女のウラの顔
花梨も飲むか?と、成瀬さんは冷蔵庫からビールを2本出した。躊躇いながらも、私は首を縦に振った。
潔い対応が男前。さりげなく私の分まで用意してくれるところがスマートでかっこいい。
成瀬さんって素敵な人だなと、つい見惚れてしまう。
表の彼は塩対応なのかもしれないけど、裏の彼は全然違う。いつもこんな感じなら、陰で「研究にしか興味のない変態」なんて言われることはないと思うのに。
無愛想キャラには、何か理由があるのかな。私がコミュ障になってしまったように、成瀬さんもトラウマを抱えていたりするのだろうか。
「とりあえず食べるか」
「はい。とってもいい匂いがするのでお腹が空いてきました」
テーブルにお弁当とビールを並べて、向かい合って座る。「いただきます」と手を合わすと、目の前の彼も同じように手を合わせた。
外はまだ強い雨が降り続けているみたいで、時折雨が窓に打ち付ける音がするけれど、成瀬さんがそばにいるからか、不安は感じない。
「…お肉が口の中で溶けますね」
さすが人気のお弁当だけあって、お肉が柔らかくて感動した。
ただ、緊張のせいかあまり味がしない。横並びのカウンター席ならまだマシなんだけど、コミュ障の私は向かい合って食事をとるのが苦手だ。
しかも相手が男性となると特に。いくら信頼している成瀬さんでも、やっぱり緊張してしまう。
何か話しかけた方がいいのかな、とか色々考えていたら、食べることに集中出来ない。
「悪くないな」
「さすが人気なだけありますね。美味しいです」
目を合わせるのが恥ずかしくて、ついお弁当を見つめてしまう。でも、ここが会社の食堂なら気にせず視線を伏せておけばいいけど、お世話になっている成瀬さんの目を見て会話をしないなんて失礼な話だ。
「…あの、なかなか目を合わせられなくてすみません」
心苦しくなって、耐えきれず謝罪した。唐突だったからか、成瀬さんは「急にどうした」と首を傾げた。