傷心した私が一夜を共にしたのはエリート俺様同期~いつも言い合いばかりだったのに、独占欲強め、嫉妬心剥き出しな程に溺愛してくるのですが?~
「一之瀬……」
「お疲れ様、一之瀬くん」

 いつになく余裕なさ気な一之瀬を前に戸惑う私をよそに、館林さんはいつも通りの笑顔を向けながら『お疲れ様』と声を掛けるも、一之瀬はそれに答える事はしないどころか館林さんを睨みつけるとすぐに視線を逸してしまう。

「陽葵、待たせて悪かったな。帰ろう」
「あ、うん……、それじゃあ館林さん、お先に失礼します」
「うん、お疲れ」

 そして私の手を引いた一之瀬はそのまま休憩室を出て行こうとするので、私は振り返って館林さんに挨拶をした。

 館林さんは特に気にしていないようだったけど、私たちが休憩室を出る直前、

「一之瀬くん、この前も言ったと思うけど、いくら余裕が無いからって束縛したり、嫉妬丸出しっていうのは止めた方がいいよ。そんなの、本條さんを信用してないみたいで……彼女に失礼じゃないかな?」

 急に挑発的な言葉を投げかけてきた。

 当然、その言葉を無視出来なかったらしい一之瀬は足を止めると館林さんの方へ振り返り、

「俺らの事はアンタに関係ねぇだろ? いちいち口出しすんなよ」

 相変わらず表情を崩さない館林さんに怒りをぶつけていく。

「ちょっと、一之瀬……」
「陽葵は黙ってろ。館林さんさぁ、まだ陽葵(コイツ)の事、諦めてねぇんだろ? 今回の件、チャンスだとか思ってんだろうけど、そんな事はさせねぇから」
「まあ、そうだね。少なくとも諦めてはいないかな? それに、今回の件は勿論チャンスだと思ってるよ」
「アンタ、ホント嫌な性格してるよな。諦め悪いのもどうかと思うぜ?」
「嫉妬や束縛し過ぎよりは良いかなと思うけど?」

 売り言葉に買い言葉、片方が何かを言えば、もう片方は更に言い返す。

 けど、明らかに館林さんの方が落ち着き払っているし、このままでは一之瀬が手を上げそうな気がして気が気じゃない。

(とにかく、この場をどうにかしなきゃ)

 このまま言い合いを続けていても良い方向に向かう事は無いと思った私は、

「いい加減にして! 一之瀬、帰るよ! 館林さん、お先に失礼しますね!」

 大きな声で二人の間に割って入り、半ば強制的に言い合いを中断させて、一之瀬と共にその場を後にした。
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