傷心した私が一夜を共にしたのはエリート俺様同期~いつも言い合いばかりだったのに、独占欲強め、嫉妬心剥き出しな程に溺愛してくるのですが?~
 少しだけ距離が離れたままだけど、私たちは共に駅へと足を進めていく。

 正直、今日はもう一緒に居たくないのだけど、恐らく一之瀬は私を家まで送るつもりだろう。

 とにかく一度冷静になりたかった私は一之瀬に今日は送らなくていいと伝える為後ろを振り返った。

「あのさ……」
「何? もしかして、今日は送らなくていいって言うつもり?」
「……うん」
「嫌だ。それは聞けない」
「何で? 別に遅い時間でもないし、一人で帰れるからいらない」
「そういう問題じゃねぇよ。俺が陽葵を一人にしたくねぇの! さっきの事、謝るから……もうあんな風な態度取らねぇから……許してくれよ……」

 すっかり落ち込んでいる一之瀬の表情はいつになく暗くて悲しげなものだった。

「…………」

 一之瀬は、本当に真っ直ぐだと思う。

 それは分かってるし、想われている事も十分伝わってる。

 私だって、こういう風に一途に思ってくれる相手との恋愛に憧れを抱いていたに違いないのに、何でもっと素直になれないんだろう。

 思えば私は、一之瀬に悲しげな顔をさせてばかりな気がする。

 こんな風に喧嘩がしたい訳じゃないのに、どんどん微妙な空気になってしまうのは、全て私のせい。

 さっきのだって、館林さんの味方をしたつもりは無かったけれど、一之瀬からしたらそう思うのも無理は無かったのだろう。

 色々な事を頭の中で考えながら、さっきの事は私が悪かったのかもと反省し、謝ろうとした次の瞬間――

「……丞くん?」

 そう一之瀬を名前で呼ぶ声がどこからか聞こえてきたのだ。
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