天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~
「俺はみんなが羨ましいよ。人として、大事なものを持っている」

 雲朔の目が少し寂しげだったので、胸がきゅっと痛くなった。雲朔のおろしたサラサラの前髪を軽く触る。

「人として大事なものって?」

「わからない。でも、俺にはない何かだ」

 雲朔のきめこまやかな整った頬に手を這わせ、目を細めた。

「雲朔もずいぶん人間臭くなったのね。昔はそんなことに興味すら抱かなかったのに」

 そう、昔から雲朔の関心は普通の人とは違っていた。当時はそれが大人びて見えて素敵だなと思った。けれど、周りと違う自分に気がついて心を痛めている今の雲朔の方がもっと素敵に見える。

「俺には、みんなが輝いて見える」

「それは、あなた自身が輝いているからよ。人の良いところを見つけられる人は、輝いていないはずがないもの」

 笑ってはいけないのだろうけれど、不思議でおかしかった。全てを持っているのに、人を羨む気持ちがあるなんて。

 私は雲朔の頭を胸に抱いて優しく囁いた。
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