新そよ風に乗って ⑧ 〜慕情〜
ミサさんは思わず口を両手で押さえ、 言葉に詰まってしまったようだった。
すると、 ミサさんの御主人は高橋さんの方へと向き直った。
高橋さんは、 ミサさんと御主人のやり取りを、 腕を組んだまま黙って見守っていたが、 腕を解いてミサさんの御主人と向き合った。
「家内が、 またご迷惑を掛けたようで」
「いえ……私は、 別に。 彼女の方が……」
そう言って、 高橋さんは私の方を見た。
「そうでしたか……。 それは、 本当にご迷惑をお掛けして申し訳ありません」
「あの……いえ、 そんな……」
急にミサさんの御主人が私の方を見て深々と頭を下げたので、 どう接してよいか返答に困ってしまった。 半ば、 助けを求めるように高橋さんを見ると、 視線を合わせてくれて、 黙って頷いていた。
そしてミサさんの御主人は、 もう一度ミサさんに向き直った。
「ミサ」
御主人はそう言いながら、 もう少し近づいてミサさんの前に立った。
「私と君の……。 君の……自分の息子である、 貴博に対する気持ちや愛情もよくわかる。 私も、 わかっているつもりだ。 藁をも掴む思いでいる心境も。 そして……高橋さんに対するずっと秘めてきた想いも……な」
「貴方……」
ミサさんは、 そう言われて顔をあげて御主人を見た。
「君が僕のところに頼ってきた時から、 わかっていたよ」
そんな……。
ミサさんの気持ちを、 御主人はわかっていたって……だってミサさんは、 きちんと今の御主人に高橋さんとの事を打ち明けたんじゃ? だからなの? 『 私と君の……。 君の……』 私と君の……と言いかけて、 敢えて君の……と言い直した? ご主人は、 ミサさんの秘めた想いを承知の上で……そんな哀しい事ってない。 自分の想いを封印してまで、 ミサさんの妊娠を受け入れただなんて。
「貴博が生まれて……そして成長していくうちに、 どんどん随所に高橋さんに似てきている事が現れてきて、 君は本当に喜んでいるのが手に取るようにわかった」
「……」
「そして、 結婚当初からずっと君の気持ちは、 僕にはなかったと言う事もね」
嘘……そんな……そんな哀しい事ってあるの?
すると、 ミサさんの御主人は高橋さんの方へと向き直った。
高橋さんは、 ミサさんと御主人のやり取りを、 腕を組んだまま黙って見守っていたが、 腕を解いてミサさんの御主人と向き合った。
「家内が、 またご迷惑を掛けたようで」
「いえ……私は、 別に。 彼女の方が……」
そう言って、 高橋さんは私の方を見た。
「そうでしたか……。 それは、 本当にご迷惑をお掛けして申し訳ありません」
「あの……いえ、 そんな……」
急にミサさんの御主人が私の方を見て深々と頭を下げたので、 どう接してよいか返答に困ってしまった。 半ば、 助けを求めるように高橋さんを見ると、 視線を合わせてくれて、 黙って頷いていた。
そしてミサさんの御主人は、 もう一度ミサさんに向き直った。
「ミサ」
御主人はそう言いながら、 もう少し近づいてミサさんの前に立った。
「私と君の……。 君の……自分の息子である、 貴博に対する気持ちや愛情もよくわかる。 私も、 わかっているつもりだ。 藁をも掴む思いでいる心境も。 そして……高橋さんに対するずっと秘めてきた想いも……な」
「貴方……」
ミサさんは、 そう言われて顔をあげて御主人を見た。
「君が僕のところに頼ってきた時から、 わかっていたよ」
そんな……。
ミサさんの気持ちを、 御主人はわかっていたって……だってミサさんは、 きちんと今の御主人に高橋さんとの事を打ち明けたんじゃ? だからなの? 『 私と君の……。 君の……』 私と君の……と言いかけて、 敢えて君の……と言い直した? ご主人は、 ミサさんの秘めた想いを承知の上で……そんな哀しい事ってない。 自分の想いを封印してまで、 ミサさんの妊娠を受け入れただなんて。
「貴博が生まれて……そして成長していくうちに、 どんどん随所に高橋さんに似てきている事が現れてきて、 君は本当に喜んでいるのが手に取るようにわかった」
「……」
「そして、 結婚当初からずっと君の気持ちは、 僕にはなかったと言う事もね」
嘘……そんな……そんな哀しい事ってあるの?