君と二度目の恋に落ちたら
充実した高校生活を送っていたある時、その巡り合わせは突然やってきた。

その日は昼休みの前の授業中からコーヒーが飲みたいと感じていたので、いつもの自販機に買いに行っていた。廊下の角を曲がろうとした時、出会い頭に人と軽くぶつかってしまった。

小さく「ひゃあ」と悲鳴を上げた小柄な女子に「ごめんなさい!」と謝ると、彼女もほぼ同時に「す、すみません!」と声を発した。

そして僕はその時に彼女が体育で見かける子だということに気が付いた。会話をしたことはもちろんないが、他の男子が彼女の話をしていたので名前は一方的に知っている。

思いがけない出来事に僕は彼女の方を見たまま一瞬思考が停止してしまったが、あまり凝視してはいけないと我に返り、彼女に一礼をしてその場を去った。

すごくびっくりした。教室の階が違うためか、廊下ですれ違うこともこれまでなかったのに、急に廊下の角から彼女が出てきたので驚きのせいか心臓が少し早く鳴っている。

体育の授業でない時の彼女は長い髪をおろしていた。ポニーテールではない見慣れない姿にもドキドキしてしまった。

自分の言葉にできない感情をかき消そうと、少し足早に自販機へ向かった。しかし、先ほどの彼女のことを思い出さずにはいられなかった。

体育の授業中はあんなに近くにいることはない。近くで見たからこその発見があった。意外と身長が低いということに気が付いたのだ。

僕自身は175cmほどなのだが、彼女はその僕の肩ほどの身長だった。近くで見た彼女は小さくて、まるで小動物のようだった。

そしてぶつかった衝撃に驚いてこちらをまっすぐ見てきた彼女の瞳は色素が薄く、透明感が強い、きれいな瞳だった。あの一瞬の出来事だったが、目が合った彼女の顔が頭にこびりついて離れない。

そして、これは変態だと思われても仕方がないが、ふわっと香った彼女の香りはとても女の子らしい花のような香りだった。

視覚と嗅覚が捉えた彼女の情報が僕の心を大きくかき乱す。

それで僕は痛いほど彼女に対する自分の気持ちを自覚せざるを得なかった。これは、恋だ。
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