君と二度目の恋に落ちたら
体育の先生たちが現れ、先ほどもかが言っていた通り今日から数時間フォークダンスの練習を行うことが告げられた。そして、フォークダンスが我が校の文化祭の伝統行事だという説明もあった。文化祭の最終日に校庭で学年ごとの円になって踊るらしい。

フォークダンスに使用される音楽が流され、先生たちから振りの指導が行われた後に男女別の出席番号順に並び、全体で輪になって実際に踊ってみることになった。

私は普段、女子としかあまり話さない。男子とは何を話したらよいのかわからないので、必要最低限なことしか言葉を交わしていない。

入学してから1ヶ月ほどはクラス内だけでなく、他のクラスの男子からも声を掛けられることがあった。そうやって声を掛けてくるのは決まって陽気な人ばかりだった。

彼らのオーラに圧倒され、会話を続けようにも上手く言葉が出てこないので、愛想笑いをして誤魔化していたが、それが伝わったのか段々と声を掛けられる頻度は少なくなっていった。

そんな私にはこのフォークダンスはなかなかキツイものであった。もしかすると、それは私だけでなく大半の人が抱えている感情かもしれないが…。

男女関係なく仲良くできる人たちにとってはなんてことないかもしれないが、普段同性としか絡んでない人間にはいきなり会話をあまりしない人と手を繋いで踊るなんてことはハードルが高すぎるのではないか。

学校の伝統行事に若干恨みを感じながら、振りを3回ほど繰り返していると曲が止まった。

「まあ、だいたいの奴らが踊れてるようにあるな。じゃあ、1曲通してやるから、今の位置から始めるぞ」

先生のその呼びかけの数秒後にまた初めから音楽が流れ始め、みんなが一斉に動き始めた。

自分の苗字が平松で出席番号が後ろの方なので、すぐに他のクラスの人が回ってきた。何人か次々と交代していく中で、いたたまれない気持ちがどんどん蓄積していった時、「あ」と声がして私はうつ向きがちだった顔を上げると、目の前には前野くんがいた。
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