君と二度目の恋に落ちたら
なんだかんだでフォークダンスへの苦手意識が失われた。そんなことはどうでもいいと思うくらいに、前野くんから言われた言葉が反芻している。

体育の授業が終わり、生徒がざわざわと体育館を出ていく中、私は一目散にもかのもとへと駆け寄っていった。少し勢いづいてもかの腕にしがみつくと、その勢いに当然驚かれた。

「なになに、どうしたのさ」

腕にしがみついたまま、私よりも10cmほど背の高いもかの顔を見上げながら、小声で先ほどの出来事をもかに伝えた。それを聞いたもかは「きゃ~!やったじゃん…!」と興奮しながらも、周りに不審がられない程度に声を落としてそう言ってくれた。

先日まではもかの恋バナを聞くばかりで、自分のことを話す日が来るなんて思っていなかった。人生何が起きるかわからないものだなと思った。

「そっか~、フォークダンスの順番…。私、まだ前野くんがどの人かわかってないんだけど、私まで回ってきたかな?」

「音楽2周したし、絶対もかも回ってきてたと思うな」

「どの人だろ…今いる?」

もかにそう聞かれ、もかの腕から離れ、あたりをきょろきょろと見まわしてみたが、すでに体育館を出ているようだった。

「残念。早くこのゆりあを射止めた人にお目にかかりたいよ」

「へへへ…」

段々とこんな話をしていることに恥ずかしさを感じてきた。やはり、まだ自分がこんな話をすることには慣れることができない。なんてこそばゆいんだろう。

「今日も自販機、絶対に行かなきゃね」

「うん」
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