君と二度目の恋に落ちたら
その後の昼休みまでの授業は真面目に先生の話を聞こうという姿勢はあったが、どうにも心ここにあらずといった状態になってしまった。

恋というものを知って、すっかり腑抜けてしまった自分が少し恥ずかしくも感じた。今日だけ、今だけ…と自分に言い聞かせ、昼休みを終えたらしっかり自分を律しようと思う。

どこまでできるか自信はないけれど。

4限目の授業の終わりを知らせるチャイムが鳴り、ついに来た…と心の中で思ったのも束の間、黒板の前に立つその数学の先生はチャイムをまるで気にしないように数式の解説を続けた。

そうだ、この先生はたまにそんなことがある人だった。

購買でお昼を買う人たちがよく嘆いていたことを思い出す。普段であれば、少しじれったく感じたとしても、強く嘆くようなことはないのだが、今日は購買組の人たちの気持ちを強く理解することができる。

先生…早く終わって…。私は心の中で祈ることしかできなかった。

およそ3分ほど過ぎた頃、ようやく授業が終わった。たった3分、されど3分。もしかすると人生で一番長い3分だったかもしれない。

購買に行く人たちは慌ててお財布を握りしめ、教室を慌ただしく出ていった。私も本当はその人たちみたいに駆け出していきたいところだったが、気恥ずかしさがあり、そんなことはできなかった。

ニヤニヤとこちらを見ていたもかと目を合わせ、一呼吸置いて教室を出た。

きっと前野くんだって授業が終わって早々に教室を飛び出すわけではないはずだ。私の方が早くたどり着いてしまうかもしれない。

もし、タイミングが合わなかったらどうしよう…前野くんの方が早く来ていた場合、私を待つなんてことはしないだろうし、逆だった場合、私は時間調整なんかしたりしてもよいのだろうか。調整をしていたことがもし、バレてしまったら?恥ずかしさでもうあの自販機には行けないかもしれない…。
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