彼は高嶺のヤンキー様10(元ヤン)
怒りで震える私をよそに、高野舟槙(こうや しゅうま)さんの父親に手錠をかけた西村署長さんは大声で告げる。
「殺人未遂の現行犯で逮捕する!」
「お父さん!!」
「・・・!!」
それで父親にすがりつく息子。
父親は下唇を噛んだまま、ジッと凛君をにらみ続けていた。
「来い!」
「君も容疑者から離れなさい!」
「ああ!?お父さんっ!!」
他の警官が高野舟槙(こうや しゅうま)さんを、父親から引き離す。
左右の腕を警察官達に捕まれた高野舟槙(こうや しゅうま)さんの父親は連行される。
その間もずっと、凛君をにらみ続けていた。
「何凛先輩にガン飛ばしてやがんだよ、おっさん!?」
「やめろ、雷太。相手にするな。」
「でも!!」
「俺は小物は気にしない・・・!!」
凛君は低い声で告げると、自分をにらんでいる中年にガンを飛ばす。
凛君のギリッという歯義尻がしたと思ったら、高野舟槙(こうや しゅうま)さんの父親が視線をそらした。
「お父さん・・・!!なんで!?なんでだよ、お父さんっ・・・!!」
その後を、警官に肩を抱かれた高野舟槙(こうや しゅうま)が続く。
高野親子が出ていったところで、フン!と鼻を鳴らしながら神楽坂君が言った。
「ざまーみやがれってんだ!!」
「・・・よしなさい、雷太。」
「だって凛先輩!!あいつ、凛先輩を殺そうとした殺人鬼ですよ!?お縄になって当然じゃないすか!?」
「まあ、人を1人・・・いや、2人殺しかけ、1匹殺してるからね。御用になってもらわないと困るかな。」
(1匹・・・・・。)
犬だろうか、猫だろうか。
この血の主である生き物に、心から冥福を祈る。
「本当に凛君が無事でよかったです!間に合ってよかった・・・!」
「間に合ったって・・・涼子ちゃん。どういう意味ですか?」
「あ・・・実は―――――凛君がバイクで2人乗りをしているところを、横から車にぶつけられて、連れ去られるのを目撃したんです。」
「そうっす!俺ら、目撃者っすよ!」
「えっ!?あれを2人共見てたの!?」
凛君の問いに、出来る限り正確な事実を伝えた。