彼は高嶺のヤンキー様10(元ヤン)
「俺も行かねぇ!毎度毎度、顔出してたまるかよ!」
「え?被害届を出さない・・・?」
「被害届出さないって、本気かい?」
「君、精肉機械で殺されかけたんだよ?」
「そうですけど、相手が知り合いのお父さんとなると、ちょっと~だからいいです!」
「・・・まあ、届けを出すのは個人の判断に任せるけど、調書を作るには、どちらにして一緒に来てもらわなきゃ困るよ。」
「これは立派な事件だからね。同行してもらうよ?」
「こ、困ります!」
「困るって君・・・まさかとは思うけど、執行猶予中だったりするのかい?」
「とんでもない!そんな罪状ありません!」
「じゃあ、一緒に来ても問題ないじゃないか。さあ、来なさい。」
「あ、いや、あの!」
「おいで!」
おまわりさんの1人が腕を伸ばし、凛君の手をつかもうとしたのだけど―――――――――
ガシ!
「必要ねぇ。」
その手を、真田さんのそっくりさんが掴んで止めた。
「えっ!?ヘルメットマンさん!?」
「なんだね、君!?」
「公務執行妨害だぞ!?」
「上司から聞いてないのか?俺が檜扇家の直系だって?」
「ぐっ!?」
「そ、それはー」
檜扇柊護さんの一言で、顔色が変わる警官2人。
「こいつら・・・特に、シルキロールしてるガキを警察署に連れていく必要はない。そっちでうまくやってくれ。わかるよな?」
「何を言ってるんだ!?そんな勝手が通るわけ―――――――!」
「やめろ!」
檜扇柊護さんに突っかかろうとした警察官1人を、もう1人の警察官が制する。
「西村署長からも言われただろう・・・?」
「だからって・・・!」
そう言って、ヒソヒソ話しだす警官2人。
ほどなくして、咳払いしながら言った。
「ではこの3人の身柄は――――――――檜扇さんに預けて大丈夫ですね。」
「そうしてくれ。」
「わかりました。では、失礼します。」
「失礼します・・・!」
1人は淡々とした態度で、もう1人は納得しきれない表情で私達の元から立ち去る。
(・・・・・・・こんなのあり・・・・・・・?)
警察官が、民間人の言いなりになった?
ありえない。
普通はあり得ないことだけど―――――――――――
(それだけ檜扇家の力が強いってこと・・・!?)
そう思ったら、ひどく檜扇柊護さんが不気味に思えてきた。
檜扇家って何者?
凛君のお兄さんが接触禁止を出すぐらい危険な存在だけど、凛君を助けてくれたよね?
敵なの?味方なの?
不安になる私をよそに、凛君は満面の笑みで言った。