彼は高嶺のヤンキー様10(元ヤン)
「おふくろは・・・純粋だったんだろうな・・・。名前の由来を聞いた当時の日記には、『彼の心の傷を癒していく!』って書いてやがって・・・。」
「普通は、そう思っちゃいますよね・・・。」
「気に入った女を自分のものにするなら手段を選ばない手口が悪質極まりないぜ!!」
ダン!と床を足で叩くと、背を丸めてしまう好きな人。
「瑞希お兄ちゃん・・・。」
そんな背中に手を伸ばし、背中をなでる。
ふいに、瑞希お兄ちゃんの手が伸びてきて、自分の背をなでる私の手を取る。
「あ・・・。」
「・・・。」
無言で私を見つめてくる瑞希お兄ちゃん。
その表情は、とてもツラそうだった。
「瑞希お兄ちゃん・・・」
なんと言えばいいかわからず、自然と好きな人の名前を呼んだ私
すると瑞希お兄ちゃんは、絞り出すような声で言葉をつむいだ。
「・・・・・・・あんなクソ共と、血のつながりがあるのは嫌だ・・・・・・・・」
「み、瑞希お兄ちゃん!?」
低い声でつぶやいた好きな人の目から、一筋のしずくが零れ落ちる。
「な、泣かないで瑞希お兄ちゃん!!」
「ばか!お兄ちゃんが泣くわけないだろう!」
「でも!」
「あーくそ!!おふくろはまともなのに!!なんで、原料の精子とその親はクズなんだよ!?」
「瑞希お兄ちゃん!」
「ちくしょう!!」
そう言うと、両肘をクロスさせて、両目をおおってしまう瑞希お兄ちゃん。
「な・・・!」
なんで瑞希お兄ちゃんが傷つかなきゃいけないの?
なんで神様は、瑞希お兄ちゃんの父を檜扇二三人にしたの?
祖母を檜扇湖亀にしたの?
愛人の子という立場にしたの?
なんで――――――――――・・・・・・・・・!!
「な・・・泣かないで!!瑞希お兄ちゃん!!」
衝動的に、瑞希お兄ちゃんに覆いかぶさる。
その胸にしがみつき、必死で訴えた。