腹黒御曹司の一途な求婚
「萌黄」

 彼女を呼ぶ声に、自然と熱がこもるのは仕方のないことだ。
 
 ゆっくりとこちらを振り返った萌黄は、俺の姿を見とめるとはにかむように微笑んだ。

「……どう?似合う、かな?」
「うん。すごく綺麗だ。本当に、すごく。美しすぎて、誰にも見せたくないくらい」

 冗談でもなんでもなく、今までで一番美しい。
 陶酔するようにそう告げると、赤い紅を引いた唇が可笑そうに弧を描いた。

「スタッフの方はもう周りにいっぱいいるけど」
「追い出そうかな」
「もう」

 コロコロと笑う鈴の鳴るような声も愛おしい。
 もうずっと、萌黄に惚れている。この先も彼女への好意は減るどころか、ますます増していくことだろう。

(萌黄に再び出会えたのは、間違いなく運命だ)

 偶然が重なり合わなければ、あの日萌黄と再会することは叶わなかった。特別信心深くはないが、こればかりは神という存在を信じたくなる。

「萌黄、愛してる。絶対幸せにするから」

 溢れる愛おしさを少しでも伝えたくて、俺は萌黄の手を取った。
 今日という晴れの日のために磨き上げられた白い肌にそっと唇を落とす。
 萌黄は頬をほんのり赤く染めながら、くすぐったそうに肩をすくめた。

「……私も。蒼士のこと、幸せにするね」

 満面の笑みを浮かべる彼女は決して守られるだけの女性じゃない。しなやかで、どんな苦難にも立ち向かえる強さを持っている。
 そんな芯の強い彼女だからこそ、俺の心を射貫いて離さないのだ。

「そうだな。一緒に幸せになろう」
「うん」

 一生涯守り抜くと誓った手を取り、俺は進むべき未来へと歩き出した。
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